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音符ビッツとは?

「川崎紫明(かわさきしめい)音符ビッツ」は、スズキ・メソードで世界的に有名な鈴木鎮一先生とグレン・ドーマン博士のすばらしい理念と教育法に学び、また大脳生理学へのたゆまぬ研究努力と、脳科学の確固たる裏付けに基づいて考案され、画期的なソルフェージュ・メソッドとして、1996年大阪の地に産声をあげました。以来16年にわたり、多くの指導者の皆様方やご家庭においてご愛用いただいております。

くり返し音楽を聴くことによって、驚くべき感性が培われるのと同じく、くり返し視ることによっても、視覚からの感性が培われるならば、誰でもすらすらと楽譜が読めるようになれるのではないか、という着眼点のもと、制作されたのが音符ビッツです。

音符ビッツ 鈴木鎮一先生とともに音符ビッツ グレン・ドーマン博士とともに

全脳を鍛える『音符ビッツ』

目で視る、耳で聴く、口で読む、または歌う、指でなぞる。それらをリズムに乗ってくり返す。『音符ビッツ』の学習法は、脳の諸野を総動員して、あやゆる機能を高めます。

ユダヤ人はとても優秀な民族ですが、彼らもこの五感を使った全身学習法で勉強します。目・口・耳の三器官を同時に使うことは、目だけ、耳だけよりも、6倍の効果を生み出すと言われています。『音符ビッツ』は、ト音記号114枚の他に、ヘ音、和音、リズムなどかなりの量がありますが、くり返し復習することにより、脳に大きな記憶回路を作ります。一度容量の大きい記憶回路ができてしまうと、人間の脳は、次から次へといろんな情報をキャッチする能力ができてしまうのです。

無限の創造力を開花

0才~3,4才位までは、神経回路が最も複雑に絡み合って発達する時期で、3才で60%、6才で80%完成すると言われています。その頃までに音楽を聴くことはもちろんのこと、右脳のパターン認識力の基本である”視覚回路”を開くことも大切です。

この幼少期は、音符や文字の大きさが小さいと読むことができないのですが、大きいものは読むことができる。ということから、大きな玉の『音符ビッツ』は”視覚回路”を開くのにとても適しています。

『音符ビッツ』は、赤ちゃんから大人まで、色々なバリエーションで楽しく遊びながら、読譜の世界へ導きます。母国語の”アイウエオ…”と同じ様に、『音符ビッツ』によりどの子も'ドレミ'を読んだり、歌ったり、創ったりできる様になります。

考案した脳開発教材(音符ビッツ)で生徒の心を育てたい

今の乱れた社会の中で、人々は不安でいっぱいだと思います。こんな時代にこそ、音楽教育は欠かすことができません。豊かな心を持って、愛情にあふれて、子ども達に接してゆきたいと願います。

鈴木鎮一先生、グレン・ドーマン博士の他、多くの方々に心よりの感謝の気持ちをこめて。
子ども達の幸せを祈りつつ。

川崎紫明

ここで『音符ビッツ』ができるまでの道のりを述べたいみたいと思います。

音符ビッツができるまで

ベルリンでの音楽への開眼

私は大阪音楽大学、ピアノ科を卒業後、大阪フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督だった朝比奈隆先生ご夫妻のご媒酌により、同楽団のクラリネット奏者であった川崎良一と結婚。9年後、主人はイスラエルへ留学、その後引き続いてドイツへ。私も娘香子を連れて、共にベルリンに留学することとなりました。

初めてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに行った時の情景を今も忘れることができません。オーケストラのすばらしい演奏もさることながら、一曲毎に聴衆からの拍手が鳴り止まないのです。それは、まるで別世界にいるようでした。

「演奏家と聴衆が溶け合ってる!!」私の目からは、涙がとめどなくあふれました。音楽の歴史の重みをひしひしと感じました。

主人はベルリン国立芸術大学へ、私は当時のコンセルバトワール(現:ベルリン国立芸術大学)に入学しました。

最初のレッスンは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番でした。

「私の全てをあなたに注ぎましょう」とおっしゃって、オーケストラ・パートを弾いて下さるクラウゼ先生のピアノを通して、ベートーヴェンの魂が伝わってくるかの様な感動を、私は覚えました。日本でのテクニック中心の厳しい授業とは違って、毎回生命のよろこびを一杯に受けて、レッスン室を出たことを思い出します。

私達家族にとって、ベルリンでの留学生活は、音楽への開眼でした。

「こんなに素晴らしい精神的な高さと、愛に満ちた音楽の世界を日本でも実現したい…」という夢と希望を胸に帰国、小さいながら”アサフ音楽院”を設立しました。

『スズキ・メソード』を求めて

理想を求めて日々模索していたある夏の日、家族4人で旅行をかねて信州の松本へ、鈴木鎮一先生をお訪ねしました。かねてから聞いていた『スズキ・メソード』を知りたかったからです。二女かぐやが2才10ケ月のことでした。鈴木先生は私達を温かく迎えて下さり、

「かぐやちゃん、いくつになったの?」
「もうすぐ3才です」
「年をとりましたねぇー」
「??」

このお言葉にびっくり仰天、まだ2才なのに…

早期教育を提唱されていた鈴木理念に触れ、私の研究もかねて、大阪から松本までかぐやのピアノのレッスンに通うこととなりました。(当時、関西には、スズキ・メソードピアノ科はなく、私は、ピアノ科研究グループ第一号とはなりません。)

鈴木先生は、私達をみつけては先生のお部屋に呼んでくださり、

「僕は、こうしてクライスラー先生から学びました」

とおっしゃって、レコードをかけながらヴァイオリンの弓を上げたり下げたりしながらの研究方法を教えて下さいました。

『スズキ・メソード』は”耳からの母語教育法”ということで、クラシックの名曲や教本の付いているテープを、一日何時間も聴かせるとこを試みました。テープ・レコーダーを砂場・お風呂場…と、子どもの居場所に引っぱって行っては盛んに聴かせました。

わが子を育てながら、耳から聴くことを通して育つ能力には、驚かされるばかりでした。

聴いた曲はすぐにピアノで弾けてしまうのです。

かぐやがバッハのパルティータを弾いた頃でしょうか、鈴木先生に読譜についてもお尋ねしたことがあります。

「かぐやは指がひとりでに動いて、気が付いたら曲を弾き終わってしまっている時があるのです。楽譜を見ながら弾いていないのです。」
「耳が育ち過ぎましたねぇ」
「先生は、読譜についてどうお考えですか?」
「スズキ・メソードは、木に例えれば幹です。葉を茂らせるのは、先生方の役目です。――川崎先生、お願いしますよ。」

私は読譜の重要性を切実に感じていましたので、鈴木先生のこのお言葉をきっかけに、それ以降、真剣に読譜の研究に取り組むこととなりました。

グレン・ドーマン博士との出会い

1992年、グレン・ドーマン博士の『赤ちゃんからの知能をどう倍増させるかコース』というレクチャーが神戸で開催されました。以前、ドーマン博士が初来日された折、講演を聴きに行ったことがあり、また著書『子どもの知能は限りなく』で感銘を受けていた私は、すぐに申し込み、参加しました。受講料は高額でしたが、1日8時間×5日間、定員100名の集中講座は、とても有意義でした。

  • 脳の成長の必要条件=大きく、楽しく、くり返し
  • 脳に向かう回路=五感(見る・聴く・匂いを嗅ぐ・味わう・触れる)でそれぞれ別の回路がある。

見る(視覚)と聴く(聴覚)が別の回路であるといことは、当たり前のことなのですが、その時の私には、強烈なインスピレーションとして心に響きました。

耳からくり返し聞くことを通じて、あれ程の感性が育つのであれば、同じ様にくり返し視ることを通して、視覚による感性も育つのではないだろうか?幾日も私の頭の中は、そのことでいっぱいでした。

『音符ビッツ』の実験

数ヶ月後、大きな五線紙に、3つの玉を描いた音符カード(ビッツ)を114枚作り、ピアノの生徒に実験してみました。積み重ねたビッツをめくりながら、1枚のビッツに描かれている3つの音符を、1つの単語として一気に速読させてみました。

  • 音符を1つずつこれは”ド”、これは”レ”と教えるのではなく、3つの違う音(’ドレミ’など)をパターンとして、右脳にイメージすることから入ります。
  • フラッシュして見せたり、めくり方練習を丁寧に教えてから、速読させるようにします。
  • 2人並んで速読させると、やる毎にスピード感が増してゆく楽しさ…1分間にめくる枚数が、40枚、50枚、60枚と増えてゆき、子ども達は一層熱中します。

「これはすごい!」と実感した私は、研究・実践を重ねました。その結果、音符ビッツをやった生徒と、それ以外の生徒とでは、集中力において大きな違いがあることを発見しました。前者は、楽譜を見る事への興味が湧いて、とても意欲的にピアノに向かう様になったのです。

また、レッスンに付いて来る下の子ども達にも同じ様にやらせてみました。そうして、ピアノを始める以前の子ども対象のグループが、次々とできていったのです。もう一度、子育てを一からやってみたいと願われるお母様が次々と現れて、ベビーブームになりました。

スズキ・メソードでピアノをやりながら、「音符ビッツ」を併用した子ども達の中から、音楽大学の他、一流大学の工学部・法学部・医学部などへ進学する生徒が次々と育ってゆきました。

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応用コースを受講して1

人間教育の基礎となる要素が組み込まれている

視覚と聴覚の統合という言葉は、これまでにも講義の度に何度もお聞きしてきましたが、絵を見せただけの時と比べて、音が入った場合の脳の働きが、6倍位になるという研究発表がされており、右脳と左脳は、はっきりと分かれているのではなく、お互いに多くの機能を分担し合っていて、右脳も左脳の協力なしでは上手く働かせることができないということを、改めて再確認することが出来ました。
また、絶えず段階を経て変化させることにより非常に優秀な機能を作ることが出来るということ、連続的にやり続ける「くり返し」によって、その機能を作っていくことが必要であると感じました。

まだまだ理解不十分なまま、カリキュラムを参考にしながらとにかく手探りでやってきましたが、今回の講座では、耳と目、手と口、足など、使う機能が系統立てて整理されており、今はどういう機能を使っているのか、常に音符ビッツと照らし合わせながらやることが必要であることがわかりました。
また、おけいこノートの使い方も、さらに進化し、段階を経て無理なく進めていけるように整理され、とてもよくわかりました。
音符やリズムを言葉と同じように自由に操ることが出来るようになれば、簡単な作曲をして楽しむことも出来ると、言葉では理解していても、実際にそこまでどのように進めていけばよいのか知りたいと思っていましたので、大変参考になりました。

音符ビッツは、ただ単に音符が読めるようになるというような簡単なものではなく、人間教育の基礎となるいろいろな要素が組み込まれていると思います。
音符ビッツ教室を始めたばかりの頃は、カリキュラムを立てて毎週実行していくことで精一杯だったように思いますが、レッスンを積み重ねながら、川崎先生の講座に何度も参加させていただき、音符ビッツの本当に目指しているものが、もっと深いものだということに気付きました。

音符ビッツ教室の方はまだ幼い子ども達で、何もかもがゼロからのスタートなので、すべてを吸収していくのだと思うと、その責任はの重大さを感じますが、ある程度成長した個人レッスンの生徒については、また少し違う意味を持っていると思います。
音を聴く、音符を読む、リズム感を身につけるなど、音楽的な能力の修得以前に、まずビッツの準備から、姿勢、めくり方、後片付けなどが大切だと考えますが、最近の子ども達の中には、きちんと正座のできない子、姿勢を正して座れない子、集中力のない子等、かつては見られなかったような、考えられない行動をとったり、お行儀のよくない子どももいて、レッスンが出来る状態になるまでの時間が必要になってきています。
そのために、レッスン希望の生徒さんには、まず、音符ビッツメロディとリズムビッツを購入してもらい、レッスンの見学期間中、毎回、音符ビッツをやることにしています。
正座ができず安定して座れないため両手が使えず上手くめくれない子や、落ち着きのない子、家庭の複雑な事情によって家でのお稽古もままならない子など、本当に大変だった生徒が、音符ビッツをやるようになってから、少しずつ変わってきたように思います。
リズムに乗って歌うというくり返しが体に染みついて、自然に口ずさむようになってくると、めくり方も姿勢も次第に改善されてきて、私の話も聞けるようになり、先輩やお友達と一緒にやる楽しみも出てきたように思います。

川崎先生の求めてみえる高いレベルにはまだまだ到達できませんが、音符ビッツを通して、すべての子ども達の可能性を伸ばしてあげたいと願っています。

阪下 多嘉子

スズキ・メソードと共に

スズキ・メソードと共に(1991年)

ピアノ研究グループ・川崎クラス 篠原 緑

スズキ・メソードとの出会い

私の娘・歩がスズキ・メソードと出会ったのは、二歳をすぎたところです。それまでは、お恥ずかしいことに、あまり知りませんでした。私自身が子供の頃に使ったバイオリンとバイオリンの教則本が「鈴木」であったというぐらいです。

近所の人に「スズキ・メソード」の教室の話をすると、本も出版されている有名な指導法だと教えてくれました。私は学生時代、オーケストラのクラブに入っていましたので、我が子には是非ピアノを、そして一緒に合奏できたらと思っていました。そこで、すぐ近所の人と一緒に、大阪府富田林市にある川崎紫明先生の教室に通い始めました。

教育関係に携わっています私は、「どの子も育つ」という鈴木先生のお考えに同感でした。そして知れば知るほど、ひかれていきました。しかし仕事をもっている私が、ずっと続けてこられたのは、二女の誕生で休暇がとれて、このチャンスを生かせたこと。また、近所のお友達である越後さんが、ご自分のお子さんと一緒にうちの子もグループレッスンに連れていってくれたからです。

母と子の音楽サロン

一茶の俳句カルタを二、三歳の子どもが百句も暗唱するなんて、と驚きと感激でいっぱいでしたが、回を増すごとに着実に覚えていく長女を見て、子供のもつ可能性のすばらしさを改めて発見しました。でも少しでもやらないと忘れるのも早い、ということも分かりました。

音符をチューリップの形で貼ったり、リズム遊びをしたり、親子で楽しみながら、知らないうちに読譜でき、リズム感もつき、音程が正しくとれるようになっていくのは驚きでした。引きつづき音感クラスに進みましたが、和音をとるのも付き添いの母親以上です。私は子どもについていき、一緒に同じ音をきいて四年程たちますが、音を正確にとれません。子どもの方は、#でも♭でも何の苦もなく聴きとってしまうのです。「より早き時期に聞き続けさせる事の大切さ」「適切な指導を受ける事の重要さ」を実感しています。

ピアノのレッスン

長女が三歳の誕生月から、憧れていたピアノのレッスンを受けることになりました。私自身、時間にゆとりがあれば今からでもピアノのレッスンを受けたい…この気持ちを娘に託しているのです。

レッスンしている曲を繰り返し繰り返し聴き、練習しています。

年齢が低い時ほど、学校などで拘束される時間が少なく、レッスンに充分時間をあてることができ、吸い取り紙が水を吸収するように吸収してくれました。しかし、年齢が高くなるにしたがって、学校やその他のことで時間がとられ、なかなか思うようにレッスンに時間をかけられなくなってきています。その上「スランプ」があります。これは「子は親の鏡」という言葉どおり、私が仕事で忙しくなると必ずと言っていい程あるのです。私の方の気持ちにゆとりがなくなり、頭の中では「急がず、怒らず」とよく分かっているのですが、人間というのは弱いものです。

こんな時、夫がブラーキの役目をしてくれます。私のカリカリした気分を落ちつかせ、長女をなぐさめ、励ましてくれます。

よき指導者 川崎先生

「よき師」――本当にこのとおり、我が子をはじめとし、子どもの心と母親の心理まで見抜かれる川崎先生にご指導を受ける事ができ、心より感謝しております。一貫して「優しく」、頭ごなしに怒らず、子供の気持ちをくみとって、その思いを受け容れる寛さに、私が教育関係の仕事をしているうえにも学ぶことろが多いのです。ピアノのレッスンは、毎回真剣で一曲ごとにテクニックの基礎作りが厳しいですが、グループレッスンはとても楽しく、それぞれの出番をいい時に与えて下さり、個性が充分に生かされるご指導で、おっとりタイプの歩を生き生きとして授業を受けています。

川崎先生の温和なお人柄、周りの人々を包み込まれるような優しい話し方にふれるたびに、忙しすぎて心がすさむことのある私は、我が子に対する接し方で「これでは、この子のためによくないのでは…」と自分自身を考えさせられます。

幼児能力のコンサートに参加して

去る三月十日、松本市で開かれたコンサートに出場させていただき、モーツァルトのトルコ行進曲を演奏いたしました。実は、この時期、私が一年中で一番忙しく睡眠時間を減らして時間を生み出している大変な頃でした。それに全国から集まる演奏会ということで、歩の能力で大じょうぶかしらとの母親の心配をよそに、歩が「ぜひ出たい」、夫も「代わりに松本まで連れていってもいい」ということで出場させいただく決心をしました。こんなに責任の重いコンサートに出るからには、普段のような練習でいいわけはありません。ただ弾けるだけではだめということで、普段は学童保育へ行っているのですが、学校が終わるとすぐに家に帰り、私が帰宅するまでひとりで練習しテープにふきこみ、私が帰宅後、そのテープを聴いて、なおし、また練習する日が続きました。川崎先生にも何回も見ていただきました。六歳の子が一オクターブとどかない小さな手で必死で音を間違えず弾いている姿には、母親の私でも感動を覚えます。

コンサート当日の朝は早く家を出、電車を何回も乗りつぎ、とても疲れたと思います。本番前の娘の不安げな顔を見ると、とても心配でした。でも弾き始めると、だんだん落ち着いた様子で、弾き終えた後は何ともいえない美しい顔をしていました。本当に満足げで充実感を味わっているようでした。

こんな娘をみて、「ああ、音楽の世界って何とすばらしいのだろう」と感激で胸がが一杯でした。本番前に鈴木先生が娘と握手して下さったのですが、その感激とぬくもりが今でも心に残っております。

ピアノ科に引きつづいてヴァイオリンの生徒さんの独奏・斉泰を聴かせていただきましたが、本当にすばらしいものでした。幼児に可能性があれ程まで引き出され、能力が育つものであるという事を知り、深く感銘を受けて松本を後に帰路につきました。

どの子も育つことを信じて

この言葉は、我々母親に勇気を与えてくれます。そして私がこの言葉を信じ、これからも、その子に合ったスピードで毎日こつこつと積み重ねていこうと思っています。

ピアノを通じて、多くの貴重な体験をする場が与えられ、また私たちの家庭に幸と生きる喜びをもたらして下さっている事を思い、鈴木先生、川崎先生に心より感謝いたします。

スズキメソード ~才能教育季刊誌より~

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夢のような日々

夢のような日々(1992年)

ピアノ研究グループ講師 川崎紫明

鈴木先生との出会いは、私がそれまで長年求めていた音楽教育の理想との出会いでもありました。そして日々追求し続けるすばらしい人生を私の上にも開いて下さったのでした。当時の格調高い雰囲気の漂う才能教育会館での学びの日々は、今も新鮮にとみがえってまいります。

ドイツ留学

一九六六年二月、主人の留学先であったベルリンへ、三歳になる長女香子を連れて参りました。私もベルリン国立音楽大学に入学クラウゼ先生からピアノを学ぶ事となりました。今でこそ若い方たちは、どんどん留学されますが、その頃はふたたび日本の地が踏めるかどうか分からないというような大変な決心をして、日本を発ったことでした。最も大切だったグランドピアノを売って、片道の旅費が出来たのでした。

ドイツの地で見聞きしたものは、その当時の日本の音楽教育とは別世界でした。私の音大時代は、音楽というよりも音楽生活で、毎日六時間、八時間、楽譜をにらみながらの猛練習でした。楽しさとはほど遠いものでした。けれどもドイツで触れた音楽は、何と自由で、豊かで感情が身体中からにじみ出ているように伝わってくるのです。

ベルリン・フィルのコンサートなど毎週家族で通いました。街角の貧しい玉子売りのおばあさんが、前の席で美しいボンネットの帽子をかぶって座っておられるなど……とても身近かで、勿論チケットもとても安いものでした。演奏する方も聴衆も、心から音楽を愛している様子がホール一杯に感じられ、暖かい雰囲気に包まれるようでした。ある時、フィッシャー・ディースカウのリサイタルで、シューベルトの「冬の旅」を聞いている時でした。隣の席の男の方が、感動してむせび泣いておられるのです。びっくりしました。すばらしい音楽を聴くことの出来る耳、また受け入れられる魂に触れ、自分の貧弱さに気づかされた思いでした。ひびきわたる「冬の旅」を聴きながら、もっともっと深く音楽の道を究めたい――その夜は芸術への開眼でした。

スズキ・メソードとの出会い

帰国後、私のピアノ教育の上にも、音を通して心が伝えられるような指導をしたい、と日々研究模索して数年が経ちました。そして、ある日、スズキ・メソードに出会ったのでした。京都で片岡ハルコ先生が生徒さんをつれて公開レッスンをなさった時の事です。三歳の生徒さんが「キラキラ星」を弾かれたのですが、その折目正しいご挨拶、心こもったタッチ、しかもとても楽しそうでした。その可愛い姿に涙があふれました。こんな教育が日本でなされているのかと驚きでした。

師を求めて松本へ

二女かぐやが生まれ、二歳十カ月の頃、家族四人で松本市にある才能教育会館に、鈴木先生をお訪ねしました。鈴木先生は、腰をかがめて握手して下さり、「かぐやちゃんは、いくつになったの」とおっしゃいました。「もうすぐ三歳です。」「年をとりましたねえ。」私たちは、まだ三歳に満たないかぐやを連れて意気揚々と伺ったものですから、先生のお言葉にはびっくりしてしまいました。

その後間もなく、私の勉強もかねて、片岡ハルコ先生のクラスに入会させていただき、大阪から松本まで毎月一回通う事となりました。朝五時に起き、お昼前に松本に着きます。駅前通りの美味しいおでん屋さんでお昼をすませ、才能教育会館に向かいます。長旅の疲れで、レッスンの頃には、ねむってしまっていたりして、いつもコンディションが良いというわけではありませんでした。そんな折は、他の生徒さん(世界レベルで活躍されている東誠三さんなど)のレッスンを見学させていただいたりしました。

鈴木先生のレッスンは、先生のご研究の様子を手に取るように教えて下さいました。「私はこうしてクライスラー先生から学びました」とおっしゃって、ちょっと初めの方をレコードをかけて、先生がヴァイオリンをお弾きになる。またもどして、もう一回同じ個所を聴いてお弾きになる。弓をかるく、ひじを上げたり下ろしたりしながら、同じ音が出るまで、動作をしてみせて下さるのです。そんな先生にお触れしながら、才能教育の実態をこの目で見、学ばせていただく機会を得ました事は、今思えば夢のようです。ホールでのグループレッスンはいつも公開されていて、よく聴かせていただきました。

ピアノのレッスン

片岡ハルコ先生は、「最初はキラキラ星から、テンポ、リズムなど感度の良い指導が必要です。部分的に悪い所は徹底的に教えこむことが大切です」と三歳の幼児も一人前に扱って、真剣なやりとりをして下さいました。お昼前頃からレッスン室の前の廊下には、熱心なお母様方と生徒さんが列をつくって待っておられました。二人ずつ部屋に入ってご指導を受けるのですが、何かワクワクした雰囲気で、先生のお言葉が、とても子どもの心を魅きつけていたように思います。はじめは「かぐやちゃん」と語りかけておられても、熱が入ってくると「あなた!」とおっしゃって、ものすごい気迫でぐいぐいと引き上げてゆかれるのです。

クレメンティのソナチネが七カ月も出来上がらなくて、「こんな小さな子に、この曲は無理なのではないでしょうか」と先生に質問したことがりました。「お母様のその気持ちがこの結果なのですよ」とお叱りを受け、私の腹はすわると一ぺんに出来てしまった事が不思議でした。大阪から松本への旅は大変でしたが、小学校に上がるまでの大切な時期、驚くべきスピードで感性が磨かれていったのを、今にして思います。ある時、全然楽譜を見ないで、「ああ、もう終わっちゃった」などと、けろっとしているものですから心配になり、鈴木先生にご相談しましたところ、「耳が育ちすぎましたねえ。」先生と一緒に大笑いした事でした。

白熱した追求心

鈴木先生は、レセプションの席上でも、廊下やロビーででも、生命力について語ってやみません。「世の中のあらゆる真実は、きわめて簡単なものだ」というトルストイの言葉を折にふれて引用され、話されました。そこには物事の「本質」に迫る鋭い執念にも似た、白熱した追求心が火花を散らしている、と言っても過言ではない――と季刊誌でも語っておられますが、「なぜこうなるのか」「どうしてこうなるのか」――次々とわき出る先生のアイディアをお聞きしながら、帰りの列車はどこをどう乗り継いで帰ったのか、まるでうわの空のように興奮していたものです。

イタイヤ協奏曲

かぐやが小学二、三年の頃でしたか、「イタリヤ協奏曲」をコンサートで弾くことになっていましたのに、前日鉄棒から落ちて、左手をねんざしてしまったことがございました。コンサートの当日鈴木先生は、舞台のそでのところで、「ああ、これこそイタイヤ協奏曲だね。右手だけで弾きなさい」と、けろっとしておっしゃるのです。アナウンサーの方に、「次は、イタイヤ協奏曲です」と言って下さい、と言われました。かぐやは、たまげてしまって、猛スピードで雲がくれ。コンサートが終わるまで会場の一番上の人目につかない所にかくれていたそうです。鈴木先生は「かぐやちゃんは、どこに行ったかね」と探しまわってくださっていました。先生のユーモアの一端です。

どの子も育つ 育て方ひとつ

「載冠式」のコンチェルトをさせていただいて後、あるコンサートでハープを聴いてから、ハープのとりこになり、東京芸術大学附属音楽高等学校ハープ科に入学しました。現在同大学大学院修士課程に学び、ハーピストとしての道を歩んでいます。昨年は国際芸術連名新人賞を受賞いたしました。

スズキ・メソードを土壌として成長され、世界にはばたく演奏家が次々と輩出されている今日、私たち指導者の使命は大きいと思います。私は今ピアノ指導のかたわら、「母と子の音楽サロン」を通して、二歳児からのグループレッスンをしていますが、日ごとに成長してゆく子どもたちを見て驚いています。「どの子も育つ、育て方ひとつ」を信じ、実践して、鈴木先生のご足跡を一歩ずつ歩んでゆきたいと念願しております。

スズキメソード ~才能教育季刊誌より~

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音符ビッツができるまで

音符ビッツができるまで

ベルリンでの音楽への開眼

私は大阪音楽大学、ピアノ科を卒業後、大阪フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督だった朝比奈隆先生ご夫妻のご媒酌により、同楽団のクラリネット奏者であった川崎良一と結婚。9年後、主人はイスラエルへ留学、その後引き続いてドイツへ。私も娘香子を連れて、共にベルリンに留学することとなりました。

初めてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに行った時の情景を今も忘れることができません。オーケストラのすばらしい演奏もさることながら、一曲毎に聴衆からの拍手が鳴り止まないのです。それは、まるで別世界にいるようでした。

「演奏家と聴衆が溶け合ってる!!」私の目からは、涙がとめどなくあふれました。音楽の歴史の重みをひしひしと感じました。

主人はベルリン国立芸術大学へ、私は当時のコンセルバトワール(現:ベルリン国立芸術大学)に入学しました。

最初のレッスンは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番でした。

「私の全てをあなたに注ぎましょう」とおっしゃって、オーケストラ・パートを弾いて下さるクラウゼ先生のピアノを通して、ベートーヴェンの魂が伝わってくるかの様な感動を、私は覚えました。日本でのテクニック中心の厳しい授業とは違って、毎回生命のよろこびを一杯に受けて、レッスン室を出たことを思い出します。

私達家族にとって、ベルリンでの留学生活は、音楽への開眼でした。

「こんなに素晴らしい精神的な高さと、愛に満ちた音楽の世界を日本でも実現したい…」という夢と希望を胸に帰国、小さいながら”アサフ音楽院”を設立しました。

『スズキ・メソード』を求めて

理想を求めて日々模索していたある夏の日、家族4人で旅行をかねて信州の松本へ、鈴木鎮一先生をお訪ねしました。かねてから聞いていた『スズキ・メソード』を知りたかったからです。二女かぐやが2才10ケ月のことでした。鈴木先生は私達を温かく迎えて下さり、

「かぐやちゃん、いくつになったの?」
「もうすぐ3才です」
「年をとりましたねぇー」
「??」

このお言葉にびっくり仰天、まだ2才なのに…

早期教育を提唱されていた鈴木理念に触れ、私の研究もかねて、大阪から松本までかぐやのピアノのレッスンに通うこととなりました。(当時、関西には、スズキ・メソードピアノ科はなく、私は、ピアノ科研究グループ第一号とはなりません。)

鈴木先生は、私達をみつけては先生のお部屋に呼んでくださり、

「僕は、こうしてクライスラー先生から学びました」

とおっしゃって、レコードをかけながらヴァイオリンの弓を上げたり下げたりしながらの研究方法を教えて下さいました。

『スズキ・メソード』は”耳からの母語教育法”ということで、クラシックの名曲や教本の付いているテープを、一日何時間も聴かせるとこを試みました。テープ・レコーダーを砂場・お風呂場…と、子どもの居場所に引っぱって行っては盛んに聴かせました。

わが子を育てながら、耳から聴くことを通して育つ能力には、驚かされるばかりでした。

聴いた曲はすぐにピアノで弾けてしまうのです。

かぐやがバッハのパルティータを弾いた頃でしょうか、鈴木先生に読譜についてもお尋ねしたことがあります。

「かぐやは指がひとりでに動いて、気が付いたら曲を弾き終わってしまっている時があるのです。楽譜を見ながら弾いていないのです。」
「耳が育ち過ぎましたねぇ」
「先生は、読譜についてどうお考えですか?」
「スズキ・メソードは、木に例えれば幹です。葉を茂らせるのは、先生方の役目です。――川崎先生、お願いしますよ。」

私は読譜の重要性を切実に感じていましたので、鈴木先生のこのお言葉をきっかけに、それ以降、真剣に読譜の研究に取り組むこととなりました。

グレン・ドーマン博士との出会い

1992年、グレン・ドーマン博士の『赤ちゃんからの知能をどう倍増させるかコース』というレクチャーが神戸で開催されました。以前、ドーマン博士が初来日された折、講演を聴きに行ったことがあり、また著書『子どもの知能は限りなく』で感銘を受けていた私は、すぐに申し込み、参加しました。受講料は高額でしたが、1日8時間×5日間、定員100名の集中講座は、とても有意義でした。

  • 脳の成長の必要条件=大きく、楽しく、くり返し
  • 脳に向かう回路=五感(見る・聴く・匂いを嗅ぐ・味わう・触れる)でそれぞれ別の回路がある。

見る(視覚)と聴く(聴覚)が別の回路であるといことは、当たり前のことなのですが、その時の私には、強烈なインスピレーションとして心に響きました。

耳からくり返し聞くことを通じて、あれ程の感性が育つのであれば、同じ様にくり返し視ることを通して、視覚による感性も育つのではないだろうか?幾日も私の頭の中は、そのことでいっぱいでした。

『音符ビッツ』の実験

数ヶ月後、大きな五線紙に、3つの玉を描いた音符カード(ビッツ)を114枚作り、ピアノの生徒に実験してみました。積み重ねたビッツをめくりながら、1枚のビッツに描かれている3つの音符を、1つの単語として一気に速読させてみました。

  • 音符を1つずつこれは”ド”、これは”レ”と教えるのではなく、3つの違う音(’ドレミ’など)をパターンとして、右脳にイメージすることから入ります。
  • フラッシュして見せたり、めくり方練習を丁寧に教えてから、速読させるようにします。
  • 2人並んで速読させると、やる毎にスピード感が増してゆく楽しさ…1分間にめくる枚数が、40枚、50枚、60枚と増えてゆき、子ども達は一層熱中します。

「これはすごい!」と実感した私は、研究・実践を重ねました。その結果、音符ビッツをやった生徒と、それ以外の生徒とでは、集中力において大きな違いがあることを発見しました。前者は、楽譜を見る事への興味が湧いて、とても意欲的にピアノに向かう様になったのです。

また、レッスンに付いて来る下の子ども達にも同じ様にやらせてみました。そうして、ピアノを始める以前の子ども対象のグループが、次々とできていったのです。もう一度、子育てを一からやってみたいと願われるお母様が次々と現れて、ベビーブームになりました。

スズキ・メソードでピアノをやりながら、「音符ビッツ」を併用した子ども達の中から、音楽大学の他、一流大学の工学部・法学部・医学部などへ進学する生徒が次々と育ってゆきました。

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