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応用コースを受講して1

人間教育の基礎となる要素が組み込まれている

視覚と聴覚の統合という言葉は、これまでにも講義の度に何度もお聞きしてきましたが、絵を見せただけの時と比べて、音が入った場合の脳の働きが、6倍位になるという研究発表がされており、右脳と左脳は、はっきりと分かれているのではなく、お互いに多くの機能を分担し合っていて、右脳も左脳の協力なしでは上手く働かせることができないということを、改めて再確認することが出来ました。
また、絶えず段階を経て変化させることにより非常に優秀な機能を作ることが出来るということ、連続的にやり続ける「くり返し」によって、その機能を作っていくことが必要であると感じました。

まだまだ理解不十分なまま、カリキュラムを参考にしながらとにかく手探りでやってきましたが、今回の講座では、耳と目、手と口、足など、使う機能が系統立てて整理されており、今はどういう機能を使っているのか、常に音符ビッツと照らし合わせながらやることが必要であることがわかりました。
また、おけいこノートの使い方も、さらに進化し、段階を経て無理なく進めていけるように整理され、とてもよくわかりました。
音符やリズムを言葉と同じように自由に操ることが出来るようになれば、簡単な作曲をして楽しむことも出来ると、言葉では理解していても、実際にそこまでどのように進めていけばよいのか知りたいと思っていましたので、大変参考になりました。

音符ビッツは、ただ単に音符が読めるようになるというような簡単なものではなく、人間教育の基礎となるいろいろな要素が組み込まれていると思います。
音符ビッツ教室を始めたばかりの頃は、カリキュラムを立てて毎週実行していくことで精一杯だったように思いますが、レッスンを積み重ねながら、川崎先生の講座に何度も参加させていただき、音符ビッツの本当に目指しているものが、もっと深いものだということに気付きました。

音符ビッツ教室の方はまだ幼い子ども達で、何もかもがゼロからのスタートなので、すべてを吸収していくのだと思うと、その責任はの重大さを感じますが、ある程度成長した個人レッスンの生徒については、また少し違う意味を持っていると思います。
音を聴く、音符を読む、リズム感を身につけるなど、音楽的な能力の修得以前に、まずビッツの準備から、姿勢、めくり方、後片付けなどが大切だと考えますが、最近の子ども達の中には、きちんと正座のできない子、姿勢を正して座れない子、集中力のない子等、かつては見られなかったような、考えられない行動をとったり、お行儀のよくない子どももいて、レッスンが出来る状態になるまでの時間が必要になってきています。
そのために、レッスン希望の生徒さんには、まず、音符ビッツメロディとリズムビッツを購入してもらい、レッスンの見学期間中、毎回、音符ビッツをやることにしています。
正座ができず安定して座れないため両手が使えず上手くめくれない子や、落ち着きのない子、家庭の複雑な事情によって家でのお稽古もままならない子など、本当に大変だった生徒が、音符ビッツをやるようになってから、少しずつ変わってきたように思います。
リズムに乗って歌うというくり返しが体に染みついて、自然に口ずさむようになってくると、めくり方も姿勢も次第に改善されてきて、私の話も聞けるようになり、先輩やお友達と一緒にやる楽しみも出てきたように思います。

川崎先生の求めてみえる高いレベルにはまだまだ到達できませんが、音符ビッツを通して、すべての子ども達の可能性を伸ばしてあげたいと願っています。

阪下 多嘉子

歩ちゃんのこと

歩ちゃんのこと(1991年)

ピアノ研究グループ講師 川崎紫明

歩ちゃんがはじめて私の教室の”母と子の音楽サロン”に来られたのは二歳になったばかりの頃でした。じっとお母さんの手を握りしめて全身で雰囲気を吸収するように瞳をこらして座っていたのが、とても印象的でした。近所の方々と共に週一度、一時間の授業を母子ともにとても楽しく、にぎやかにすごされ、好奇心と喜びにあふれて通っておられました。

この”母と子の音楽サロン”は、ピアノのお稽古の苗床とも言うべきもので、リトミックやわらべうたなどを通じて音楽に親しむための授業ですが、人間の基礎作りにとっても、はかり知れない要素を含んでいます。一方、家庭ではスズキ・メソードのピアノのテープ、またその他名曲アルバムを子供に聴かせ、音楽にあふれた環境作りをしていただくように、お母様にご指導しているクラスです。

私は、音楽的センスを養う上で、非常に大切な時期であることを痛感しています。鈴木先生が常に言われますように、より早い時期に年齢に応じた環境作りをする事が、その子供の一生にとって大きな意味をもっていると思われます。歩ちゃんは、こうした理想的な環境の中で二歳の頃を過ごし、三歳になるお誕生日を待って、他のお友達と一緒にピアノのお稽古を始めました。

その頃には、どの曲もドレミ唱法ができていますから、ピアノに向かえば気軽に弾けるので、楽しくてどんどん一人で曲を覚えていきます。歩ちゃんは普段はおとなしいのですが、気性の激しい一面もあって、一度こじれると大声で泣き出し、誰が何と言ってなだめても、どうにもならない始末で、お母さんが「先生どうも申し訳ございません」とおっしゃって、連れてお帰りになる事が何度かありました。そんなときは私も心得たもので「次のチャンスを待ちましょう」と申し上げますと、懲りずに一度も休まずに通って来られました。そのお母さんの揺るぎない態度が、いつしか歩ちゃんの中に確固たるものを築いていったのでしょう。一年もすれば、鋭い集中力が養われ、目覚まし進歩が見られるようになりました。

普通、幼児が喜ぶような美しい可愛い絵入りの楽譜には、あまり興味を示さず、耳から聞き覚えた曲を早く弾けるようになりたいという一心で、頑張り通すという具合です。楽しみながら、弾きたいという意欲をもちつづける事ができるのは、スズキ・メソードの素晴しい教育法だと思います。難しい曲でもレコードで聴いた曲を、自分で弾いてみたくて仕方ないのです。

「今日はここまでにしておきましょう」とレッスンを打ち切りますと、けげんな顔をします。歩ちゃんにとってはピアノのお稽古は、おもちゃで遊ぶと同じように魅力があるのでしょう。家でのお稽古の時でも、うまく弾けなかったら泣きながらでもやり通すという、たくましさと意欲が育っていきました。私の教室では、ピアノの個人レッスン以外にミニ・コンサートをしばしば開きますが、先輩やお友達の演奏を通して意欲づくりになっている事も、大きいと思います。これまでにバッハの”メヌエット””ジーグ”ベートーヴェンの”エリーゼのために”ダカンの”かっこう”モーツァルトの”ソナタ”ほかの数々の曲も大変よく弾けました。

本人、お母さま、先生が一つになって目的に励む瞬間は、普段では現れ出ない感性が引き出され、能力が一段と高められるのだと思います。

これからも歩ちゃんの周りの多くのお友達と一緒に、音楽と共にすくすくと育って下さる事を願ってやみません。

スズキメソード ~才能教育季刊誌より~

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